1 着物の価格形成
 1-i きものの原価

商品にはどんなものでも原価がある。原価とは商品を仕入れた価格である。その原価に利益を上載せしたものが販売価格(上代)となる。

この仕組みは問屋であろうとメーカーであろうと同じである。問屋は染屋織屋から仕入れる価格が原価と成る。メーカーは仕入れた材料に付加価値を付けて問屋に売る。仕入れた材料は材料原価となる。

ここでは小売店(呉服屋)が仕入れる価格を原価とし、その原価がどのようにして形成されるのかを論じてゆきます。

小売店が問屋から仕入れる価格が原価になりますが、問屋が小売屋に売り渡す価格(原価)は必ずしも一定ではありません。同じ商品をA呉服店は10万円で、B呉服店は12万円で仕入れることもあります。そのからくりについては後に詳しく述べますが、ここでは問屋が小売店に引き渡す標準価格の形成についてお話します。

染物の場合、商品が問屋にたどり着くには次のような経路をたどります。
白生地問屋→染屋→問屋

しかし、これは非常に単純化した図式です。白生地が白生地問屋にたどり着くまでにも、

養蚕農家→製糸業者→製織業者→精練業者→白生地業者

と言う過程をたどります。しかし、実際にはもっといろんな行程の業者がかかわります。また、近年日本での繭の生産は極端に少なくなり、輸入業者も介在してきます。糸の状態で輸入する場合もありますし、海外で織られた白生地を精練前の状態で輸入して日本で精練する場合もあります。また白生地として輸入されるものもあります。それらが複雑にかかわってきますので、染屋に入る白生地も必ずしも一元的な流通ではありません。

染屋でも、柄の原画の作成や糸目を入れる行程、その他沢山の行程がありますので必ずしも一件の染屋が全て行うわけでありません。沢山の行程、手を経て商品は問屋に渡ることになります。

必ずしも一通りではありませんが、複雑な過程をを経て商品が問屋に渡るのは御理解いただけるでしょう。

商品が問屋に渡るまでに介在する加工業者はそれぞれの商売ですので、自分が付加価値を付けた分だけ価格を上載せして売り渡します。

そのように複雑な過程を経て問屋が仕入れる価格が問屋の仕入原価となります。そして、その商品を小売屋に売り渡す価格が小売屋にとって仕入原価となります。

原価は付加価値が集積されたものですので、高いものはそれなりに付加価値がついた物です。着物に限らず付加価値の付いた物は価格が高くなるというのが原則ですが、着物の場合それ以外の要素が価格を決める大きな要因となっています。

小売屋の仕入原価が一定でないことは既述しましたが、何故同じ商品の原価が小売店によって違うのかを考えてみたいと思います。

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