まえがき

お客様と話していると、歯がゆく思うことが多々ある。そのような事をきもの春秋で一つ一つを説いてきたつもりでしたが、中々消費者には真意が伝わらなかったように思えます。

既刊のきもの春秋よりも分かり易く、と言うよりももっとストレートに着物を愛好する人たちに知っていただきたいことを書いて行こうと思いますが、その内容について概略をご紹介致します。

(1) きものの価値、本当の価格を知ってもらうこと。
きものの価格は良く分からないと言われます。高い着物と安い着物はどこが違うのか。高い着物は何故高いのか。
私も呉服を商う商売をしていて、何故着物の価格はこうも違うのか。それも同じ着物が数倍の価格で売られているのを見るに就け、「このような事が通ってよいのだろうか。」と疑問に思ってしまいます。余りにも違った価格の着物が世の中に氾濫し、そして消費者は知ってか知らずかそれを受け入れている現実。
着物の価格が形成されていく過程と仕組みを本論では細かに解説します。

(2) 着物のしきたりとは何なのか。
着物を着る上で一般に言うTPOがよく話題になります。結婚式では何を着れば良いのか。同窓会では何を着れば良いのか等、場所に合わせたTPO。5月は何を着れば良いのか。8月は何を着れば良いのかと言う季節に合わせたTPO。着物の場合は事の外厳しく細かに決められています。
しかし、そのTPOが煩わしく着物が嫌いになってしまう人もいます。
私はお客様やその他の方々に「何時何を着れば良いのか」と言う質問を良く頂戴します。
また議論として命題としてそのような話が出されることがあります。
「〇〇の本にはこう書いてあった。」
「いや、□□先生はそうは言わなかった。」
「××呉服店で買ったときはこう教えられた。」
と言う風に、議論が錯綜して結論が見出せないこともしばしばです。
長年そのような疑問に答えてきましたが、私は正直そのような議論にはごめん被りたい気持ちです。人それぞれが、自分が聞いた事を絶対な物と信じ他人と論争する。果たして真実はどこにあるのだろうか。着物の話になるとそのような議論が果てしなく続けられます。
自分が聞いた着物のしきたりを是とし、他人のいでたちは間違いだと言う。異なった説、異なったしきたりを振りかざして相手を非難するような議論に私は加わりたくない。
着物のしきたりの本質を本論の中で考えて見ます。

(3)着物を日本の衣装として復権するには
着物は日本人が古来衣装として身に纏ってきたものであり、それは日常、非日常を問わず一年中、昼夜を問わず着ていたものです。それが現代では特殊な衣装となり、着る場も限られています。更にあらゆる規制が掛けられ、あたかも特権階級の人達の衣装のような面さえ感じられます。
着物を商うことを生業とする人たちは、一見着物の普及を叫んでいるようだけれども、実は着物を益々縁遠いものにしていることは否めません。
本当に着物を復権させるにはどうしたらよいのかを考えます。
                                

2014年9月21日

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