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11. 浴衣(ゆかた)
   
最も手軽なきもの、と言えばほとんどの人が「ゆかた」と答えるかも知れない。

手軽と言うのは、安価で、着付けが難しくなく、誰が着ても様になる、と言う意味である。私の店にも外国のお客様が入って来て、浴衣を物色していく。外国では日本のきものをお土産にしたいならば、ゆかたを、と言う事が旅行の案内書にでも出ているのではないかと思ってしまう。

外国人を例に出すまでもなく、海外に長期、短期に留学する高校生が現地で着るために、ゆかたを買っていく。冬の季節に留学の為にゆかたを買いに来た高校生がいた。南半球のオーストラリアにでも留学するのかと思って聞いてみると、行き先はアメリカだという。
「アメリカは今冬でしょう」
と言うと、日本のきもの姿を見せたいから、ゆかたをもって行きたいと言う。寒いけれども、ゆかたを着るのはほんの短時間だから構わないと言う事だった。

高校生がきものを一式揃えて持っていくというわけにはいかないし、現地では一人で着なければならない。ゆかたは少し練習すれば一人で着ることができるし、襦袢やその他の付属品も少なくて済む。やはり、ゆかたは最も手軽なきもの、と言う事なのだろう。

私の場合、ゆかたは手軽なきものではない。最も不得手なきものである。男の場合、ゆかたは素肌にゆかた一枚、それを帯一本で着こなさなくてはならない。やせて腹の出ていない私にとっては帯一本でゆかたを落ち着けるのは容易ではない。きものを着るのが慣れていない訳ではないけれども、着崩れしてしまう。

反対に私にとって一番着崩れしないのは紋付羽織袴である。袴をはいて帯で押さえてしまえば着崩れすることなく、裾を気にする必要もない。はたから見れば、紋付は堅苦しいように見えるけれども、私にとって、ゆかたはそれほど着るのが難しいきものである。

ゆかたは、もともと鎌倉、室町時代に湯沐(ゆあみ)をするときに用いた麻生地を湯帷子(ゆかたびら)と言っていたのを略して「ゆかた」と呼ぶようになったものである。ゆかたは、その起源からも分かるように正式なきものではなく普段着、それも夕方から夜にかけて着るきもので、通常日中は着用しない。

着る時期は、東京では五月十三日の神田祭りから着始めたと言われているが、山形では七月に入ってからが一般的なようだ。そして、下着や足袋はつけずに裸足に下駄が一般的である。

「ゆかた」という言葉は広い意味に使われるときもあり(きものの曖昧な表現の一つである)、木綿や麻の単衣物をさして言う事もあるようだ。ゆかたは日中には着ない、と書いたけれども、これは狭い意味の浴衣でコーマ地のゆかたを指している。

高級ゆかた(という表現もある)には綿紅梅、小千谷、綿紗等が有り、これらは紗の八寸や博多献上帯で太鼓を作れば町着として着られる。

ゆかたの粋な使い方を一つ。

温泉旅館に泊まりに行くと、決まってお揃いの寝巻と丹前が渡される。旅館の名前が入っていたり万人向きの柄でしっくりこない。柄も去ることながら大きさも同じで、誰でも着られるよう丈は短めで背の高い人はすねまで出てしまう。温泉に行くときは、気に入った浴衣を一枚バックに入れていく。女性も対丈のゆかたを一枚作っておけば着慣れない人でも温泉でおしゃれにくつろげるのでないだろうか。 



 

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