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15. 本薩摩絣(薩摩結城)

 薩摩絣という織物を知っている人はそう多くないかも知れない。

 私が薩摩絣を知ったのはだいぶ昔のこと。中学生の頃の事だったかも知れない。祖父が自分が着るため問屋から仕入れてきた物で、
「これは大野伴睦が着ているのと同じものなんだ。」
と言って見せてくれたのだった。私は薩摩絣も大野伴睦も知らずに、ただ

「じいさんが自慢するのだから何か大した物なのだろう。」
ぐらいにしか思わなかった。

 その薩摩絣を仕立て替えして今私が着ている。背が低く、首の太かった 祖父の着物は少し丈が短く、小襟が広いので私の体系にピッタリという訳 にはいかなかったが、私は好んでそれを着ている。何故かといえば、答え は簡単。着やすいのである。ただその一言につきる。

 薩摩絣は綿織物である。綿織物と言えば絹の下に見られてしまう。しか し、どんな高価な絹織物よりも着やすいのである。綿と言う言葉が連想さ せる「ごわごわ」という感覚が全く無いのである。安価な綿織物は糸が太 く反物は太巻になってしまう。しかし、薩摩絣は非常に細い糸で織られて いるので、生地が薄く滑らかで、反物は絹物の中でも薄い大島紬と間違い そうな位である。

 私が呉服業界に入ってからも薩摩絣に出会う機会はなかった。しかし、 最近ようやく探し回って見つかったのである。生産反数は極端に少なく、 永江明夫氏という技術者が細々と作り続けているらしい。その薩摩絣は確 かに祖父にもらった着物と同じ風合だった。

 薩摩絣の風合、着やすさはそれに触れた者にしか分からない。このような織物が廃れていくのは残念でならないのだけれども…。  




 

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