Ⅶ-37 またまた呉服業界の危機(羽二重がなくなる)その4

黒紋付の羽二重地に限らず姿を消しつつある織物や染物も出てきている。昭和60年の資料を紐解くと、当時既に消えそうな染織が多くあった。

秋田県秋田市 秋田八丈   企業数 1  従業員数 6
秋田県鹿角市 茜染・紫紺染 企業数 1  従業員数 3
栃木県益子町 益子草木染  企業数 1  従業員数 5
千葉県佐倉市 下総染    企業数 1  従業員数 1
千葉県館山市 唐桟織    企業数 1  従業員数 4
島根県安来町 安来織    企業数 1  従業員数 2
岡山県岡山市 烏城織    企業数 1  従業員数 2
熊本県熊本市 肥後絣    企業数 1  従業員数 3

いずれもその当時はまだ市場で(問屋で)耳にする事もあったけれども、30年経った今はほとんど聞かなくなった。まだ織っているとしても極少量かもしれない。伝統的な織物や染物が姿を消すのは呉服屋としてとても残念である。

しかし、ここに並べた織物や染物が姿を消すことは大変残念ではあるけれども、他の織物、染物で取って代われない訳ではない。秋田八丈がなければ本場黄八丈を、益子草木染が手に入らなければ他の草木染を、と言うように。

しかし、黒紋付の羽二重地が無くなってしまえばとりあえず取って代われる生地はない。「羽二重の男の黒紋付」と言うアイテムが着物から削除されてしまうのである。

帯地の塩瀬羽二重地もなくなれば「塩瀬の染帯」と言うアイテムはなくなってしまう。デュークエイセスの「女一人」と言う歌の歌詞に「結城に塩瀬の素描の帯が・・・」と言うのがあるが、この歌詞の「塩瀬の素描の帯」と言う帯はこの世に存在しなくなる。いや、手に入らなくなるのである。

帯や着物はまだ良いかもしれないが、私が心配しているのは着物を仕立てる時に必要な付属品が無くなる事である。

例えば男物の絽の半襟。問屋にはまだあるけれども、何時かなくなるのではないか心配でならない。男物の絽の半襟は年間どのくらいの需要があるだろうか。私の店では年間数枚である。色数も多いので、年間一枚も売れない色もある。

生産者は年間どの位作っているのだろう。仮に一社の独占であったとしても、その一社さえも採算を割ってしまう可能性も大いにあると思える。

このように、着物地や帯地に限らず付属品や小物が需要の減少により突然姿を消すことになれば呉服業界が一瞬にして崩壊することに繋がりかねない、と言うのは心配のしすぎだろうか。

羽二重地が完全になくなれば、おそらく女性の石持地のように縮緬を使う事になるかもしれない。
女性の喪服も昔は羽二重地だった。しかし、いつの間にか縮緬地に取って代わっている。男の紋付地も将来は同じように縮緬地か他の生地に取って代わられるのだろう。

それでも羽二重地の紋付が無くなるのはとても寂しく思う。張りのある羽二重の紋付を着た男性の姿は、縮緬の紋付では取って代わる事のできない凛々しさが感じられるのだが。

羽二重地は未だ流通在庫があるようです。

「紋付を誂えようと思っている男性の皆さん。今ならば間に合うかもしれません。お早めのご注文お待ちしております。」(笑い)←笑い事ではないのだけれど。

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