Ⅶ-32 江戸小紋

江戸小紋は、着物のアイテムの中でも比較的ポピュラーである。着物が好きな人であれば一枚は持っているかもしれない。「小紋」とは言いながら、色無地と同じように紋を入れて準礼装として着る事ができる。色無地よりもちょっとおしゃれで、帯を替えればフォーマル、カジュアル、結構幅広く着る事ができます。

私の店でも昔から数えきれないほど江戸小紋を仕立てています。しかし、着物の需要の減少と共に昔ほど頻繁に仕立てる事はなくなってしまいました。自然、私の店でも昔に比べれば扱う反数が少なくなっています。

先日、江戸小紋の染屋さんが来て、改めて江戸小紋を扱ってほしいと言う事で、この度送ってもらった。江戸小紋と言っても、本型染の江戸小紋である。

江戸小紋は非常に細かい柄が染めてあるが、元々武士が登城する際に身に付けた裃の柄を着物にしたものである。江戸小紋で最も一般的である鮫小紋も裃の柄である。

江戸時代の有力藩には、それぞれ留め柄と言われる藩独自の裃柄があった。鮫柄は紀州徳川家の柄で、他の藩は用いる事ができなかった。

因みに、徳川将軍家は御召十、島津家は大小霰、前田家は菊菱、細川家は梅鉢、鍋島家は胡麻を定小紋としていた。

江戸小紋柄のうち「鮫」「行儀」「通し」の三柄は小紋三役と呼ばれている。いずれも錐彫りの細かい点が並んだ柄で、遠目には色無地の様にも見えるが、色無地とは違った味がある。色無地の様で色無地ではなく、ボカシの様でボカシではない江戸小紋独特の味である。

江戸小紋は伊勢型紙を使って染められる。地紙は、美濃和紙を三枚、縦横縦と柿渋で張り合わせた強靭な紙を使う。型職人が細い錐を使って柄を彫って行く。型職人は非常に熟練を要する仕事である。

また、型を使って柄を付ける染職人も高度な技術を要する。短いものでは一尺もない型を何十回も繋いで染めて行く。僅かでもズレれば柄に横線が入ってしまう。型を使った友禅は他にもあるが、型染職人100人の内、江戸小紋を染められるようになるのは僅か2~3人だと言う。

江戸小紋は制作にとても手間の掛かる染物である。

さて、現在の江戸小紋と言えば捺染のものが多い。捺染とは捺染機を用いるプリントである。型染のように一型一型手で染めて行くのではなく、捺染機でプリントするので遥かに安価に上がる。そして「きれい」に仕上がる。

しかし、この「きれい」と言うのが曲者である。「きれい」が人間の目に必ずしも「美しい」と映るとは限らない。

型染の江戸小紋と比べれば一目瞭然である。型職人によって彫られた型を使い、染職人によって染められた江戸小紋は比べ物にならないほど温かみがある。

つづく

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