Ⅶ-28 これから着物とどう付き合うべきか

今呉服業界では様々な変化が起こっている。それは、呉服業界に限らないのかもしれない。情報や流通が発達し、これまでなかった事が起こり、今迄の常識が通じなくなっている。そしてそれらは短いサイクルで起こっている。昨年と同じことをしていたのでは、今年は全く通じない、と言う事をしばしば経験する。

先日、小物の商社の方と話をしていた。

「最近いかがですか、ご商売の方は。」

商売上では儀礼的な挨拶である。

「いや呉服関係は全然よくありませんが、レンタルが良いんですよ。」

確かに、レンタルの着物や浴衣が伸びているという話はよく聞く。京都や浅草に行けば、いかにもレンタルと思えるような井出達の人に良く出合う。外人さんも多く、特に中国の人達に人気の様である。

その小物屋さんは小物からプレタの着物や浴衣も扱っており、レンタル用のポリエステルの既製品も多く扱っている。

「今年はレンタルに助けられました。」

もちろん綿の既成浴衣も扱っているのだけれども、今まで売れていた既成の綿浴衣は今年は散々だったという。

「昨年は売れていたんじゃないですか。」

そう聞くと、
「ええ、昨年は売れましたが今年は全然ダメでした。本当にレンタルに助けられましたよ。」

そして更に、
「浴衣が売れないと言っても、若い人たちが浴衣を着なくなったわけではないんです。」

通常、物が売れなくなるのは、その商品の需要が減少するからである。若い人たちが浴衣を着なくなれば浴衣の需要が減少し、売上は減る。しかし、今はそうではないという。

「少し前は、若い人が浴衣を捨てるという話がありました。」

その話は以前私も聞いたことがある。セットで3000円くらいの浴衣を買い、彼女と花火を見に行く。Gパンで行き、途中で浴衣に着替える。帰りはまたGパンTシャツに着替えるが、浴衣を畳むこともできず、面倒くさいのでゴミ箱に捨てて行く。花火大会の後、会場のごみ箱には浴衣が捨ててあるという話である。

昔は安い浴衣と言えども、一枚一枚手で染めたものなので、そこそこの値段もしたし、それを捨てると言う事はなかった。現代の技術革新が創った安価な浴衣のなせる業なのだろう。その小物屋さんの話には続きがあった。

「しかし、今の若い人達は浴衣を捨てるようなことはしなくなったんです。」

品行方正な若者が増えてきた、と思いきや。

「若い人は、浴衣でも着物でも次々と回すんです。」

最初、私は意味がよく分からなかった。

「いらなくなった浴衣や着物、もらった着物、小物でもなんでも、皆メルカリやオークションに出して処分するんですよ。」

もう三十年も前から古着の業界が活気づいている。しかし、当時は着物を古着に出すのは極一部の人達だった。わざわざ古着屋さんに着物を持って出向いて値踏みをしてもらって売って来る。そのような手間は万人のできるものではなかった。

しかし、今日情報産業の発達によって誰にでも簡単にできるようになった。着物や浴衣に限らず、3000円で買って、いらなくなったものは500円ででも処分できれば良い。あわよくば1000円で処分したい、という希望が簡単に手続きできて換金する事ができるようになった。

持っている浴衣が不要になれば即座に処分する。購入する方は、「どうせ一回しか着ないから」とか「安けりゃ安い方が」と言う思いで購入し、用を足せばまた処分する。そう言ったサイクルができつつあるらしい。

つづく

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