Ⅶ-25 振袖・成人式の行方(その2)

地方によっては、祖父母の葬式に孫が振袖で参列する慣習が残っている。祖父母を一番きれいな姿で送ってあげたいと言う気持ちなのか、また村人が集まる葬式で「この村にこのような綺麗な娘がいますよ」と紹介する意味もあったと言う。

そのように振袖は折に触れ着られてきた。成人式もその振袖を着る良い機会だった。成人式は戦後始められたものである。振袖は成人式に相応しい着物ではあるが、決して成人式用の着物ではない。成人式にも着られる晴れ着だったのである。しかし、いつしか「成人式=振袖」「振袖=成人式」になってしまった感がある。何故そのようになってしまったのだろうか。

日本の新成人人口は減り続けている。平成17年の女性新成人は73万人だったが、平成29年は59万人である。それでも、成人式出席率が60%、振袖着用率を97%とすると、34万3千人の新成人女性が振袖を着用した事になる。確実に34万3千着の振袖が必要になる。34万3千人の若い女性が一時に一斉に振袖を着る。供給する側にとってはこれ程良い商機はない。

成人式に出席する女性のほとんどが振袖を着る。着る人は特定できる。着る日も特定できる。となれば自ずと商戦も激しくなり商売合戦となる。

通常、商売合戦となれば、利するのは消費者である。商う者は自ずとより良い商品をより安く消費者に提供しようとするからである。しかし、振袖商戦ではそうはならなかった。

商戦は、価格の低下を招いた。これは無消費者にとってよい事である。セット販売などで、価格が分りずらかった振袖のセット価格を明確にし、誰でも振袖を着れる様になった。しかし、価格の低下以上に質の低下を招いたように思う。誰もが高価な手描き友禅の振袖を着るわけにはいかず、低価格化に質の低下が伴うのは仕方ないが、品質の割に価格は下がっていない。

商戦の激化は、価格の低下以上に次のような商法を招いてしまった。

①ノベルティ商法
振袖購入者に多大のノベルティを付ける事で販売を拡大しようとした。海外旅行や高額な電気製品など、振袖とノベルティのどちらがメインなのか分からない物もあった。

②展示会商法
展示会に招いて過度な接待をして販売につなげていた。中には、展示会に来た客は逃すまじと、しつこく購入を迫るケースもあった。

④若年齢からの囲い込み
成人に達するはるか以前からDMを送り見込み客を確保していた。
配られるDMは、次第に豪華さを増し、豪華なカラー冊子やビデオテープ付もあつた。その経費たるや、振袖代金に上乗せされていることは明らかなのだが。

⑤早期の約定
振袖販売、レンタルを問わず、成人式の二年前、三年前から約定を採り、浮気できないように代金まで徴収している。早期に約定を採る殺し文句は「早く約定しないと、着付けの良い時間がとれません。」と言うものだった。

約定は早く採ったものが勝ちである。振袖販売、レンタル業者は、他店がやれば自分の店でもやらざるを得ず、それがエスカレートして二年前、三年前となったのだろう。

先の「はれの日」の事件で分かったように、早期の約定、代金の支払いは多大のリスクを伴うのである。

振袖販売、レンタル業者は「はれの日」のような業者ばかりではない。良心的にまじめに販売、レンタルしている業者も沢山ある。しかし、「悪貨は良貨を駆逐する」如く、振袖の商法は次第に上記のような商法をエスカレートさせてきた。

つづく

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