Ⅶ-18 着物との本当の付き合い方とは・続編(その2)

ご主人の好みも聞きながら、
「これは仕立て替え。」「これは丸洗いして裄を出す。」「これは丸洗いだけ。」
と分けて行った。

結局、二着を仕立て替え、アンサンブル二着を含む六着は丸洗いして裄を出すこととなった。
「全部加工するのに、ちょっと時間を頂きますが、単衣と夏物はできるだけ早くします。」
そう言って加工する着物を風呂敷に包んだ。

「どうぞ、お茶を御一服。」
と言う奥さんの声に、茶の間でお茶を頂いた。

御主人は奥さんに一言。
「いやー、お宝があるかと期待したけど、やはり無かったよ。」
御主人も、何かお宝があればと内心期待していたようだった。しかし、着物は皆大切に保管され、加工すれば十分に着られるものだった。御主人にとっては、着られないお宝よりもずっと値打ちのあるお宝だったと思う。

丸洗いして裄を出しても加工代は一着当たり二万円足らずである。それで六着の着物が着られるようになったのである。本来着物はこのように着継がれるべきものである。

巷の呉服屋で聞かれる「着物は長く着られますから。子や孫、末代まで着られますよ。」と言う売り口上は全くその通りである。しかし、全国の呉服屋さんはそれを実践しているだろうか。最近の展示会商法や訪問販売を見ていると疑問を抱かざるを得ない。

呉服屋に限らず商売はお客様の立場に立ち、プロとしてどんな商品、サービスをお客様に勧めたらよいのかを考えなければならない。商売を長く続けようと思うのならば、お客様の信頼は欠かせない。

お客様の好みに懐具合も考え併せ適切な商品を進める。加工するのであれば、どのような加工ができるのか、そして安くできる加工法も合わせて考えお客様に提示する。そう言った事が今の呉服屋には欠けている様に思える。

呉服屋に、仕立替えや加工を頼みに行くと、「できません。」「加工するなら新しく作った方が安いですよ。」の一言で追い返される話も聞こえてくる。「着物は孫末代・・・。」の売り口上は何だったのかと思う。

親や知人から譲られた着物を大切に着る事を今一度考えて見てはいかがだろうか。

近くの呉服屋、行き付けの呉服屋に持ち込んで着物にもう一度命を吹き込んで欲しい。本当の呉服屋であれば、喜んで相談に乗ってくれるはずである。乗ってくれないのであれば、それは唯の呉服を売るだけの業者である。

消費者の熱心な思いがあれば、呉服業界も変われるものと思う。

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