Ⅶ-14 呉服専門店の役割(その2)

さて、専門性を売りにしていた従来の専門店の問題として、この本屋が抱える問題と同じような問題が呉服業界にもある。

振袖の販売が呉服業界から離れて、振袖屋が大きな位置を占めてきている。

前項でも書いたように、振袖はターゲットを絞りやすく、金額も張ることから、やり方によっては、美味しい商売と言える。

売れる物に特化して売る。儲かる商品に特化して売る。そういった傾向は益々拡大するだろう。その中で専門店の役割は何かと考えさせられる。

巷の店では、沢山売れる物が店頭に並べられる。かつて専門店は、消費者が必要とするであろう商品を全て並べていた。中には、極専門的なもので、年間数個しか売れない物も置いていた。

私の店で袴を仕立てる時、袴止(腰板に付けるヘラ状の物)を手芸屋さんに買いに行く。何時行っても、同じ場所に同じ箱に入って置いてある。店の人に年間何枚位売れるのかと聞くと、ほとんど私が買って行くだけだと言っていた。私の店の為に袴止を在庫していてくれるようなものだ。

専門店はそういうものだったが、最近はその役割もなくなってきた。

インターネットの登場により、どんな専門的な商品でも検索すれば探し出せて注文ができる。店を周って商品を探す必要もない。

してみると、大量に売れる商品を特化して売る店が現れ、専門的な商品はインターネットで手に入れることができる。

先の本屋を例にとれば、週刊誌はコンビニで買い、専門書または販売部数の少ない本はインターネットで購入する。そうなれば、既存の本屋は何を売ったらよいのだろうか。販売が0にはならないが、採算の採れない店が続出してくるだろう。

本屋のみならず、流通業界は日に日に進化している。専門店が世の中から消えてゆくのも時代の流れかもしれない。

しかし、私は専門店として最後まで残りたいと思う。如何に専門店が日陰に置かれようとも、専門店の役割は間違いなくあると思うからである。

魚屋さんが新鮮な魚を目利きしてくれる。ブティックで洋服をコーディネートしてくれる。紙屋さんが慶弔時に合わせて使うべき熨斗紙を教えてくれる。米屋さんが同じ品種でも誰が栽培した米が美味しいのかを教えてくれる。

流通が発達して、物が簡単に買えるようになっても、専門店の役割は厳然として存在する。そして、それを求めている消費者がいる限り、専門店の役割はなくならない。

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