Ⅶ-13 成人式と振袖業界

最近の成人式は何かとニュースを賑わす。

数年前までは「荒れる成人式」として暴走族まがいの新成人が酒を飲んで暴れたり、式場で騒いで退場させられる新成人がいたり、と新成人本人の資質が問われるような話題がニュースを賑わしていた。

また、近年はファッションショーや仮装行列かと思わせるようないでたちの新成人が話題になっていた。こちらは、呉服屋から見ると、まるで伝統から逸脱した振袖や紋付など、これも現代若者の文化なのかと考えさせられた。

そして、今年真っ先にニュースを賑わしたのは、振袖の販売、レンタル業者である「はれのひ(株)」の夜逃げ事件だった。一生に一度の成人式を楽しみにしていた人達にとっては悲劇としか言いようがない。

今年の成人式の話題は、新成人達本人ではなく、それを支えるべき旧成人の話題になってしまった。事件は故意的な詐欺によるものなのか、あるいは経営破綻の結果なのかは分からないが、今回の出来事は起こるべくして起こった事件の様に思える。

振袖は和服の中でも目立つ着物である。目立つと言うのは、振袖は着物の中でも最も豪華で華やかな着物である。価格も物にも寄るが、袋帯や襦袢などを合わせれば一般に高価でもある。そういう意味では、和服の華と言えるかもしれない。

成人式が近づいてくると、和主はお客様に次のような事をよく言われる。
「成人式が近いので、お忙しいでしょう。」
ほとんどの新成人女性が振袖を着ている成人式を見ると、
「さぞ呉服屋さんは振袖を売るのに忙しいのでしょう。」
と思われるらしいのだが、私の店ではそのような言葉通りの忙しさはない。

一つには、新成人達は成人式が近いからと言って振袖を誂えるわけではない。振袖を誂える時期は人により様々である。強いて言うならば、最近は進学や就職で地元を離れている人が多いので、春休みや夏休みに親子で振袖を見に来る人もいるが、それも時期が決まってはいない。

もう一つの理由としては、振袖を誂える人は少ない。

成人式の振袖を着ている新成人達を見ると、
「あんなに沢山の振袖姿・・・。」
と思われるかもしれないが、実は最近レンタルが多い。今回の事件でも「レンタルした振袖が届かなかった。」と言う人が沢山いた。昔はレンタルで成人式に臨む人はいなかったと思うけれども、最近はレンタルが多数、いや主流になっているようだ。

とは言え、それでも平成18年山形県の成人式対象者は1万1141人。その内女性は5501人である。成人式に出席しない人もいるので八掛と考えても、女性全員が振袖を着れば、5501×0.8=4400人分の振袖が必要となる。レンタルを選ぶ女性は5~7割という話もある。中には母親の振袖を着る人もいるので、実際に振袖を誂えるのは3割以下かもしれない。

仮に3割としても山形では1320着の振袖が販売されていることになる。私の店ではレンタルはしていないので、この1320着が対象になるのだけれども、私の店では年間の振袖販売は数着である。呉服屋の振袖販売量としては非常に少ないと思われるかもしれないし、「おたくの店では振袖はもっと売れるでしょう」と言う問屋さんもいる。しかし、振袖の販売は、私の感覚からすると呉服業界とは違った別の業界が販売しているように思える。

つづく

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