Ⅶ-ⅻ 着物との本当の付き合い方とは(その4)

初めて着物を仕立てるので寸法の控えはなかった。そこで着ている着物を見本として採寸することにした。ところが着ている着物は異常に丈が短い。裄も短かった。

「ちょっと丈が短いようですが。」
と言うと、
「これ私の祖父さんの着物なんです。うちの祖父さんは背が低かったので・・・。」
着ていたのは祖父が着ていた単衣の着物だった。直さずに来ているので、丈は2寸程度(7~8センチ)短かった。採寸して、その後丹前地を仕立てて納めた。

しばらくして、また風呂敷包みを抱えてやってきた。

「先輩、いいですね。やはり自分の寸法と言うのは。足元は暖かいし、体にピタッと来るんです。」

そう言って風呂敷包みを解いて、
「これも仕立て直してください。私、いつもこれを着ているんです。」

先日着てきたウールの着物だった。正直高価な着物ではない。袖口も一部擦り切れている。それでも内揚げしてあるので丈は伸ばせそうである。

仕立替えをするとなると、通常、洗い張りをして筋けしをして仕立て替える。加工賃も結構かかる。いくらぐらいかかるかを理解していただくために加工する手順と加工賃を説明した。そして、普段着なので折痕が気にならないのであれば洗い張りをせずにアイロンで伸ばすだけなら安くなることも説明した。

ウールは普段着である。昔はおそらく仕立て替えするのにいちいち丁寧に洗い張りなどしなかったかもしれない。もしくは自分の家で洗い張りをしたのかもしれない。

「どうせ家で着ますので、洗わなくても結構です。」

結局、解いてアイロンで筋消しして仕立てることにした。

風呂敷包みには他にも数着の着物が入っていた。
「これはどうしたらよいでしょうか。」

いずれも祖父や父親の着物らしいが、着ていてやはり自分の寸法に直せれば良いと思ったのだろう。それら一枚一枚寸法を測り、打揚げはあるのか、反物幅は裄が出せるだけあるのかどうかを調べた。残念ながら内揚げがなかったり、幅が足りなかったりで仕立替えが難しい物ばかりだった。

しかし、一枚だけ私の目に留まった着物があった。単衣の綿の絣だったが、非常に柔らかく綿薩摩かと思わせるものだった。亀甲も綺麗に揃っている。

「残念だけど仕立て替えは難しい物ばかりですが、これだけは良い物ですので洗い張りをして仕立替えしたら良いですよ。」

私がそう言うと、
「ああ、それはとても着易いと思っていたんです。それじゃ、それだけ仕立替えしてください。」

結局、ウールと綿絣の着物を仕立て替えることになった。

つづく

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