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ちょっと割り込み

 いつも「ゆうきくんの言いたい放題」をお読みいただきましてありがとうございます。「古い着物はどうしたらよいか (着物のメンテナンス) (その3)」をお読みいただいている途中ですが、お知らせがあり割り込ませていただきます。
 当ホームぺージは、「全日本きもの研究会」として2001年に立ち上げ、途中改変しながら今日に至っています。たくさんの方にお読みいただき、「ゆうきくんの質問箱」は520回を数えました。
 当初、商品の販売を目的として開設しましたが、「きもの春秋」「きもの博物館」をはじめとしたコラムの充実を図った事と、諸条件によりWEB上での商品の販売を停止しておりました。
 諸条件と言いますのは、WEB上でのきものの販売が乱立し、掲載した商品が正当な判断の基に委ねられるのかの疑問が生じたからです。
 全国の着物のサイトには沢山の商品が掲載されています。価格も様々です。着物の価格決定が不透明なことは既に述べたところですが、当社では仕入れにより(浮き貸しではなく)安く仕入れ、消費者にも適正な安い価格での提供に努めています。ほとんどの着物は、見ればだいたい原価がいくら位かは見分けがつきますが、WEB上には「何故こんなに安く」と思われる商品から、「こんな高い価格でよくWEBで販売できるものだ」と思わせるものまであります。
安い商品は、バッタ商品であったりオークションでの投げ売りだったりします。高い商品は、高価に見せる演出で売っているようです。どちらにしましても、当社の商品が不当に安く、または不当に高く思われたりする場合もありました。
安いと思われる方の中には、「何故そんなに安いのですか」「正絹ですか」と聞かれる場合もあり、高いと思われる方からは、バッタ商品やオークションの商品と比べて「そんなのインターネットなら〇〇円で買えるよ」と言われたりもします。
「加賀友禅訪問着25,000円」と言うのもWEB上で見かけたことがあります。どんな商品かは分かりませんが、白生地、加工代を含めて25,000円では絶対にできないのですが、消費者の中には「加賀友禅なんて、本当は23万円」と思う人もいるかもしれません。
そんな訳でお客様には目の前で商品をお目にかけ、ご説明しながら納得のいただけるよう商品の販売は店頭に特化していたのですが、わざわざ遠くから店を訪ねてきてくれる方もあり、また「商品はどのページで見られるのですか」と言うメールも度々頂戴しております。
そう言った声を受けて、この度「結城屋セレクション」を掲載することになりました。当社が責任を持って仕入れた商品を順次掲載いたします。商品についてのお問い合わせはメールにてお受けいたします。
以上、よろしくお願いいたします。

古い着物はどうしたらよいか (着物のメンテナンス) (その4)」は来週掲載いたします。御了承願います。

平成2941

Ⅵ-ⅵ 古い着物はどうしたらよいか (着物のメンテナンス) (その3)

絵羽物は着物全体で一つの柄を成すもので、柄付けが縫い目を越えて屏風絵のようになる。訪問着や留袖、付け下げがそれにあたる。柄の位置が決められているために白生地を着物の形に裁ってから柄付けをする。小紋の場合は、身丈の長さに応じて反物を裁つけれども、絵羽物の場合は、着る人の身長がわからないので十分な身丈で絵羽付けする。従って仕立てる時には長い分内揚げをする。余計な分は縫い込んでおくのである。
仕立てる前の仮絵羽状態で、絵羽物の身丈は45寸から47(170cm178cm)ある。女性の着物の身丈は、身長位が標準なので、たいていの女性は内揚をして十分に仕立てられる。身長160cmの人が仕立てようとする訪問着の身丈が170cmの場合、10cm短くするために5cmつまんで内揚をする。

絵羽物は身丈(裁ち切り)を十分に採ってあるので余程の長身でなければ身丈は十分に伸ばすことができる。身長175cmを超えるバレーボール選手のような背の高い人の場合は仕立てられない事もある。この場合は別染等で対応することになるが、これは例外として考える。

次に、仕立て替えで袖丈を変更する場合、変更しようとする袖丈ができるのかどうかも着物を解く前に検証しなければならない。
仕立て替え後の袖丈の寸法が以前のそれよりも短ければ問題はない。言わば、袖丈を縫い詰めるだけなので、袖丈は十分に確保できる。しかし、袖丈を長くしようとする場合、いくつかの問題がある。
まず、袖丈が確保できるかどうかは解いてみれば分かる。14寸の袖丈に仕立てようとする場合、洗い張りした袖の長さが、14寸×2+縫い代があれば仕立て替えができる。しかし、洗い張りをして袖を図ってみたら袖丈の寸法が足りなかったでは仕立て替えはできない。通常、仕立て替えて袖丈を伸ばそうとする場合、袖先にどれだけ余分に縫い込んであるかを触って検証する。
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3寸の袖丈を14寸にしようとした場合、13分程度の縫い込みがあれば仕立て替えができる。しかし、怪しい場合は袖先の一部を解いて縫い込みが実際どれだけあるのかを実測してみる。それで仕立て替えをするかどうかを判断することはよくある。

注意しなければならないのは、古い着物の袖丈を伸ばす場合、袖先の折痕が残らないかどうかの判断である。
着古した紬の場合、袖先が擦り切れている場合がある。その場合、十分な縫い込みがあったとしても、袖丈を伸ばせば袖の先に擦り切れた線が入ってしまう。このような場合、前と全く同じ袖丈で仕立て替えようとしても、擦り切れて仕立てられない場合もある。袖先の同じところをもう一度縫うのが難しくなるからである。そんな時には普段着であれば、袖丈を少々短く仕立てることもある。擦り切れを避けて仕立てられるぎりぎりの線で仕立てる。いくらか袖丈が短くなってしまい襦袢の袖丈と合わなくなってしまうが、着られないことはない。

Ⅵ-ⅵ 古い着物はどうしたらよいか (着物のメンテナンス) (その2)

【きものの仕立替】

上述したように、着物は洗い張りをして仕立て替えることができる。ただし、無条件にどのような寸法でもできるわけではない。

きものには、それぞれの寸法がある。着物の持ち主と、仕立て替えようとする人の身長体系がほぼ同じであれば、ほぼ間違いなく仕立て替えはできる。寸法の中でとりわけ仕立て替える際に問題となるのは、「身丈」「袖丈」「裄丈」である。

「身丈」は、その人の身長によって決まる。

身長だけでなく、腰紐をどの位置にするのか、その人の着方によっても身丈は左右される。腰紐を上にする人は身丈が長くなる。反対に腰紐を下にする人は身丈が短くなる。腰紐の位置により、おはしょりのつまみが大きくなったり小さくなったりする。腰紐の位置を変えることによって、自分の身丈とは少々違った着物でも着ることができる、といったメリットもある。

仕立て替えで身丈を変える場合、身丈を短くすることは容易にできる。つまり、身長の高い人の着物を身長の低い人用に仕立て替えることはできる。その反対に、身長の低い人の着物を身長の高い人用に仕立て替える場合、身丈を伸ばさなくてはならない。短い布を長くすることはできないが、方法としては二つある。

着物を仕立てる際、あらかじめ身丈を長く仕立て替えられるように「内揚げ」をしている着物がある。「内揚げ」とは、身丈寸法を必要以上に生地を裁ち切り、余分な分を胸のあたりでつまんで襞をとって仕立てる。洗い張りをして伸ばせば、より長い生地になって、その分身丈を伸ばすことができる。

仕立て上がった着物を見ると、内揚げがあるかないかは容易に見分けられる。胸のあたりに襞がとってある。背中にも襞がとってあるが、これは「くりこし」の為の襞である。前身頃、胸のあたりに襞があれば内揚げがあるのがわかる。

内揚げのつまみが1寸であれば、解けば2寸身丈を伸ばすことができる。1寸5分であれば3-寸身丈を伸ばすことができる。

内揚げがない場合は、身丈を伸ばすことはできないが、更に方法がある。

余り布があれば、これを剥いで身丈を伸ばすことができる。剥ぐのは帯の下に隠れるような位置で行うが、小紋など染物では、剥ぎが目立ってしまうので余り行わない。紬やウールなど、極普段着を仕立て替える際に行われる。つぎはぎで着物を仕立てるようだけれども、生地を大切に、最後の最後まで使おうと言う先人の知恵のようで、そういった着物の着方をされる方には喜ばれる。

以上は、小紋や紬の話で、訪問着や留袖など、いわゆる絵羽物ではこれとは違ったルールがある。

つづく

Ⅵ-ⅵ 古い着物はどうしたらよいか (着物のメンテナンス)  

 「古い着物はどうしたらよいのでしょう。」この質問はよく頂戴する。相談の内容は様々で、「古い着物」と言っても、「親からもらった着物」「他人から譲られた着物」「古着屋で買った着物」などなど。
 また、「どうしたらよいか」も様々である。「どうして処分したらよいか」と言う人もいるし、「自分の寸法に仕立て替えられるのか」と言う人もいる。「洋服に仕立てられるか」と言う人もいるし、「何かにできないか」と言う人もいる。
 いずれも現物を見せていただければ適切なアドバイスはできるのだけれども、それ以前の問題として「古い着物はどうしたらよいのか。」と言う言葉の裏には、否定的な諦め感といったものを感じさせる人が多い。「こんな着物どうしようもない」「こんな着物もらったけれども・・・」と言った感情である。
 きものに興味のない人が、親から、他人から着物をもらえば、そのように思うかもしれない。そこには、着物が生活と縁遠くなってしまった今日の社会環境とともに、着物に対する無理解がある。この着物に対する無理解は、決して消費者が責められるべきものではなく、むしろ我々呉服業界にその責任があると思っている。もらった着物、いらなくなった着物をどのようにすればよいのか。それは呉服屋が消費者に丁寧に啓蒙していかなければならないし、その義務がある。しかし、昨今の呉服屋は商品を売ることのみに専念して、きもののメンテナンスを二の次にしているように思う。
 「古い着物はどうしたらよいのか。」と相談に来たお客様にアドバイスをすると、「そんなことができるのですか。」「そんなに安くできるのですか。」と言う言葉が返ってくる。また、「お宅で買った着物ではないのですが」と前置きしてくるお客様もいる。本来呉服屋は、きものを売るだけではなく着物全般のメンテナンスを受け持っている。私の店でも、他で買った反物(と言うよりも、いつどこで買ったのか分からない反物)でも、仕立てやメンテナンスは行っている。そういう意味ではもっと呉服屋を利用してもらいたいと思っている。
 きものは洋服と違って、着古したものでも大切に扱えば末永く利用できる(必ずしも着ることではなくても)事を広く消費者に理解してもらう必要がある。

 着物は一枚の布、幅40cmあまり、長さ13m余りの一枚の布から仕立てられる。直線裁ちが基本で、曲線に裁つことはほとんどなく余り布もでない。用尺が長ければ、長い分は「内揚げ」として縫い込んで、仕立て替えに備える。それでも長ければ余り布は残るが、切れ端ではなく、一枚の布として残るので、捨てる生地はなく必要に応じて後で利用される。

 必要のなくなった着物を解けば一枚の布(反物)に戻る。汚れた着物を洗い張りする場合、解いて羽縫いをする。元々の反物を仕立てる時に裁ったように生地を並べて縫い合わせるのである。それを洗い、きれいになった生地で再びきものを仕立てる。時には前とは違った寸法で仕立てる。必要であれば色を染め変える等、洋服では考えられないことを着物では常識として行われる。
 では、具体的に着物の仕立て替えや加工はどのようにできるのか、古い着物はどのように活用できるのかを考えて行こう。

Ⅵ-ⅴ 寿司ときもの(その3)

外国人が着物に興味がある以上、着物を海外に広めたい、または商売につなげたいと云う動きが出てくる。海外で着物を着てくれれば日本人としては嬉しいし、需要が増えれば衰退して行く着物の産地にも良い影響があるかもしれない。そう思う人もいるだろう。
しかし、外国人は呉服屋やデパートで着物を買うことはない。一番のネックは価格だろうし、実際にパーティでも普段でも外国人が着物を着る事はまずないだろう。
彼らが買って行くのは、土産物店に並ぶ「KIMONO」である。国際空港の売店や浅草などの観光地でよく見かける。「KIMONO」とは言えバスロープのようなもので、いわゆる着物ではない。せいぜい日本の香りのするものかと思えば、毒々しい竜や富士山、芸者(正しくは芸者ではなく花魁)が描かれている。マネキン人形に着せられているが、そのマネキン人形の頭には特攻隊よろしく日の丸の鉢巻きが巻いてあったりする。以前からそのようなものが姿を消さないところを見ると良く売れるのだろう。
着物を海外に紹介するのはおかしなことではないが、これが「着物」として海外に広まっていったとしたらどうなるのだろう。
〇〇ロールが日本の伝統料理である寿司、今の「JUDO」が日本の柔道、そして日本の「着物」は「KIMONO」と云う認識が世界中に広まる。それを「日本の文化が世界中に広まった証」と捉えられるだろうか。
外国でどんな寿司が創られようと、日本人が文句を言う筋合いではない。まして、それが美味しく、その国の人達に喜ばれているのであれば尚更である。国際JUDOはルールを日本人が独断で決めるわけには行かない。
日本の着物とは似ても似つかないものを「KIMONO」と呼ばれても何ともしようがない。
日本人のみならず他の国の人達にとっても、内的に自分達の文化を守り継承することと、自国の文化を世界に紹介、あるいは普及させる事との間には越えられる一線があるように思える。
この先、日本の着物や伝統文化をどのようにしてゆくのか、それは日本人が真剣に考えなくてはならない事である。