Ⅴ ⅱ きものは高い?(その4)

きものの普段着にはどのようなものがあるのでしょうか。また、日本人皆がきものを着ていた時代には普段何を着ていたのでしょうか。

江戸時代などと昔に遡らなくても、戦前のきもの事情はどうだったでのしょう。紬はもちろんありましたが、普段着としては、綿やウール(ネル、セル、メリンスなど)が良く着られていました。

私の祖母は圧倒的に綿のきものが多かったといいます。メリンスも袷で着ていましたが、メリンスは生地が弱く、普段には綿が主流だったようです。(正絹の)紬を着ている人は少なかったといいます。ほとんどの女性がきものを着ている時代に皆が(正絹の)紬を普段に着るほど紬は出回ってはいなかったでしょうし、綿の方が安価でした。

普段着の主流は(正絹の)紬、と言う感覚は昔はなかったようです。普段着と言えば綿やメリンスを指し、(正絹の)紬は、高級普段着といったところでしょう。

では、綿やメリンスはいくら位したのでしょうか。当時の物価を取り上げてもしょうがないので、私の店の在庫を取り出してみると

純毛モス着尺(メリンス)  14,000円(税抜き)

会津木綿         11,000円(税抜き)

越後片貝、紺仁綿紬    23,000円(税抜き)

です。

これを仕立てて着るには、仕立代や裏地が必要です。単衣、袷によっても違いますが、仕立て上げた場合、30,000円~50,000円くらいでしょうか。(正絹の)紬は、普段着るようなもので70,000円~80,000円位ですので、袷で仕立て上げて120,000円~130,000円位です。この価格は洋服に比べて高いのでしょうか。

普段着のワンピースは安い物で3,000円~8,000円。ブランド物で20,000円~50,000円位でしょう。もちろん超ブランド品にはまだまだ高価なものもあるでしょう。

ワンピースは3,000円、綿のきものは30,000円と言えば、きものは高いと思うかもしれません。しかし、ワンピースと綿のきものを定性的に比べてみる必要があります。

新調したワンピースはどれだけの期間着るでしょうか。物持ちの良い人であれは数年間着る人もいるでしょうが、次々と新しいワンピースを新調する人もいるでしょう。

綿のきものはと言えば、昔は10年、あるいはそれ以上着ていました。祖母の時代には数着の綿の着物を取り替えながら毎日着ていました。ほころびがあれば直し、裾が破れれば仕立て直しをして着続けていました。それでも、どうしても着れなくなった場合、解いて他の用途に流用していました。完全循環といえる使い方をしていました。

綿のきものを1着潰すのにワンピース10着、と言うような単純な計算ではありません

昔は仕立替えも自分でやりましたし、親が着たものを仕立替えして子供が着るといこともありました。ワンピースは流行を追えば次々と新しいものを着なくてはなりませんが、きものは流行がないので、着ようと思えば着続けることができます。

結論的に言えば、洋服と着物どちらが高いか、という比較はできないという事です。言えることは、どちらも平均的な市民が無理なく着られる衣装であるということです。

「いや、そうは言ってもきものは・・・。」と言う人もいるでしょう。そういう方は

きものに対する認識を変えていただきたいと思います。

きもの、洋服どちらも長い目で見れば価格は同じだとします。しかし、一年の内360日を洋服で過ごし、5日だけきものを着る人にとっては、きものは大変高く感じられるはずです。もしも、360日を着物で過ごす人でしたらきものは安く感じられるはずです。

また、紬が普段着と思っている人が多いと思いますが、(正絹の)紬は、いわば高級な普段着です。まして、結城紬、大島紬に至っては超ブランド品の普段着と思っていたら良いでしょう。昔の人たちは皆が普段着として結城紬や大島紬を着ていた訳ではありませんから。

ただし、結城紬や大島紬を高級紬として片づけてしまうには語弊があります。

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