Ⅴ ⅱ きものは高い?(その3)

さて、具体的にきものは高いのか、論じよう。

「きもの」と言うと、全て一色反にしてしまいそうだけれども、「きもの」と言っても様々である。普段のきものから式服まで。洋服に当てはめてみれば分かる。ジーパンからタキシードまで様々である。また、同じスーツでも、超ブランド物やオーダースーツ、から郊外店で売っているツーパンスーツまで価格もまちまちである。

「きものは高い」という裏には「洋服と比べて」と言う比較が伴っている。きものが高いか安いかは、洋服との綿密な比較をする必要がある。それは単に価格だけではなく定性的なものも含めて判定しなければならない。

まず普段着について考えてみよう。普段着と言う言葉はかなり大雑把な言葉で、広い意味では式服以外と言える。この定義に当てはめて、洋服の普段着の場合はどうだろう。

Tシャツも普段着と言える。ワンピースも普段着である。ニットスーツも普段着の部類に入れられるかもしれない。さて、その価格はと言えば、1,000円のTシャツから数万円のワンピース、10万円以上のニットスーツもある。さらに超ブランド品ともなれば、数十万円の普段着もあるだろう。結論的に言えば、普段着といえども全てが安いとは限らず、価格破壊のフィルターを通った超安価な物から一般人には手の届かないものまで様々である。

きものの世界で、女性の普段着と言えば紬が揚げられる。紬と言えば結城紬や大島紬を連想する人もいるだろう。そんな人たちには、「結城紬って100万円もするんでしょ。」「大島紬は高いのよね。」と言った言葉が飛び交うことになります。「普段着と言えどもきものは高い。」そんな印象を受けてしまいます。

洋服の普段着に高価なものから安価な物まであるように、きものの普段着も様々です。昔の人たちの普段着はどのようなものだったでしょうか。

絹の紬を着られる人はそう多くはなかったでしょう。綿を着ていた人もいるでしょうが、綿が日本で一般的に出回る以前は、麻が主流でした。麻や綿を普段着としていた人が多かったでしょう。近代に入ると西洋からウールが入ってきて普段着としてのウールもありました。ネル、セル、メリンスといったウールのきものが出回りました。

ウールはここ2~30年で急速に姿を消しました。「しょうざん」と言うウール着尺地が一世を風靡したこともあります。

私の店では、綿反からネル、セル、メリンスまで揃えています。生産が減って入手するのも困難になりつつありますが、呉服屋の矜持としておいてあります。

洋服の普段着と同じように着物の普段着にも高価なものから安価なものまであります。しかし、普段着と言えば紬、それも高価な紬ばかりを連想するのは、きものを正しく捉えていないからではないでしょうか。

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