Ⅱ-ⅳ 展示会 (その4)

② 演出

展示会では消費者を引き付ける様々な演出が行われる。

機織実演、や友禅染の実演など○○実演と称するもの。作家の先生が直接消費者に語りかけアドバイスをする。産地の人が出向いて普段消費者がお目に掛かれない体験をしてもらうなど、消費者にとっては大変興味深い演出が行われている。

これらは消費者に呉服を理解してもらう上で大変有効で、業界にとっては着物を消費者にアピールする良い手段である。

しかし、展示会では度を越した演出も行われている。

以前、大手呉服問屋を訪れた際、商品担当者が変ったいでたちで売り場に座っている。それまではスーツを着た普通の販売員であった人が、髪を撫で付け立派な口ひげを生やしている。作務衣に袖なしの羽織をはおって何がしかの訳ありの人間のように見える。

「あの人どうしたんですか。商品課の○○さんでしたよね。」

私が問屋の人間に聞くと、

「ああ、あいつは先生になったんです。」

と答えた。

しばらく見てると、他の客(呉服屋)に話し始めた。商品を説明しているが、その語り口はタレントのような芸術家のような話しぶりである。それを聞いていた問屋の他の人間が、

「はは、あいつ本当に先生に成り切っているわ。」

と小声で言っていた。

先生になりきっているその社員は商品担当として商品の知識は身につけているし消費者に商品の説明をすることもできる。しかし、先生とは思えないし、なぜそのような演出をするのだろうか。

目的は一つ、消費者の購買意欲をそそる事である。

そのような演出によって、消費者にとっては問屋の社員も偉い先生に見える。偉い先生に商品の説明をされて勧められ、商品を購入する。その「先生」の話すことは間違ってはいない。しかし、知識のある小売屋や他の問屋の商品担当者の域を超えるものではない。

売り場を盛り上げるパフォーマンスは必要であるが、それが消費者の目を曇らせるものであってはならないと思う。

過度な演出に、「つい買ってしまった。」ということは無いだろうか。展示会を楽しむのは良いけれども、消費者には着物を購買するその本質を忘れてもらいたくはないと私は思う。

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