月別アーカイブ: 2014年9月

Ⅰ 着物の価格形成 Ⅰ-ⅰ きものの原価

商品にはどんなものでも原価がある。原価とは商品を仕入れた価格である。その原価に利益を上載せしたものが販売価格(上代)となる。

この仕組みは問屋であろうとメーカーであろうと同じである。問屋は染屋織屋から仕入れる価格が原価と成る。メーカーは仕入れた材料に付加価値を付けた上で問屋に売る。仕入れた材料は材料原価となる。

ここでは小売店(呉服屋)が仕入れる価格を原価とし、その原価がどのようにして形成されるのかを論じてゆきます。

小売店が問屋から仕入れる価格が原価になりますが、問屋が小売屋に売り渡す価格は必ずしも一定ではありません。同じ商品をA呉服店は10万円で、B呉服店は12万円で仕入れることもあります。そのからくりについては後に詳しく述べますので、ここでは問屋が小売店に引き渡す標準価格の形成についてお話します。

染物の場合、商品が問屋にたどり着くには次のような経路をたどります。

白生地問屋→染屋→問屋

しかし、これは非常に単純化した図式です。白生地問屋にたどり着くまでには

養蚕農家→製糸業者→製織業者→精練業者→白生地業者

と言う風です。しかし、実際にはもっといろんな行程の業者がかかわります。また、近年日本での繭の生産は極端に少なくなり、輸入業者も介在してきます。糸の状態で輸入する場合もありますし、海外で織られた白生地を精練前の状態で輸入して日本で精練する場合もあります。また白生地として輸入されるものもあります。それらが複雑にかかわってきますので、染屋に入る白生地は必ずしも一元的ではありません。

染屋でも柄の原画の作成や糸目を入れる行程、その他沢山の行程がありますので一件の染屋が全て行うとは限りません。沢山の行程、手を経て商品は問屋にわたることになります。

一通りではありませんが、複雑な過程をを経て商品が問屋に渡るのは御理解いただけるでしょう。

商品が問屋に渡るまでに介在する加工業者はそれぞれの商売ですので自分が付加価値を付けた分を上載せして売り渡します。

そのような過程を経て問屋が仕入れる価格が問屋の仕入原価となります。そして、その商品に問屋のマージンを上載せして小売屋に売り渡す価格が小売屋にとって仕入原価となります。

原価は付加価値が集積されたもので高いものはそれなりに付加価値がついた物です。着物に限らず付加価値の付いた物は価格が高くなるというのが原則ですが、着物の場合それ以外の要素が価格を決める大きな要因となっています。

小売屋の仕入原価が一定でないことは既述しましたが、何故同じ商品の原価が小売店によって違うのかを次回以降考えて行きます。

きもの春秋終論「着物を愛好する人に知ってもらいたいこと」(きもの春秋終論の内容)

お客様と話していると、歯がゆく思うことが多々ある。そのような事をきもの春秋で一つ一つを説いてきたつもりでしたが、中々消費者には真意が伝わらなかったように思えます。

既刊のきもの春秋よりも分かり易く、と言うよりももっとストレートに着物を愛好する人たちに知っていただきたいことを書いて行こうと思いますが、その内容について概略をご紹介致します。

① きものの価値、本当の価格を知ってもらうこと。

きものの価格は良く分からないと言われます。高い着物と安い着物はどこが違うのか。高い着物は何故高いのか。

私も呉服を商う商売をしていて、何故着物の価格はこうも違うのか。それも同じ着物が数倍の価格で売られているのを見るに就け、「このような事が通ってよいのだろうか。」と疑問に思ってしまいます。余りにも違った価格の着物が世の中に氾濫し、そして消費者は知ってか知らずかそれを受け入れている現実。

着物の価格が形成されていく過程と仕組みを本論では細かに解説します。

② 着物のしきたりとは何なのか。

着物を着る上で一般に言うTPOがよく話題になります。結婚式では何を着れば良いのか。同窓会では何を着れば良いのか等、場所に合わせたTPO。5月は何を着れば良いのか。8月は何を着れば良いのかと言う季節に合わせたTPO。着物の場合は事の外厳しく細かに決められています。

しかし、そのTPOが煩わしく着物が嫌いになってしまう人もいます。

私はお客様やその他の方々に「何時何を着れば良いのか」と言う質問を良く頂戴します。

また議論として命題としてそのような話が出されることがあります。

「〇〇の本にはこう書いてあった。」

「いや、□□先生はそうは言わなかった。」

「××呉服店で買ったときはこう教えられた。」

と言う風に、議論が錯綜して結論が見出せないこともしばしばです。

長年そのような疑問に答えてきましたが、私は正直そのような議論にはごめん被りたい気持ちです。人それぞれが、自分が聞いた事を絶対な物と信じ他人と論争する。果たして真実はどこにあるのだろうか。着物の話になるとそのような議論が果てしなく続けられます。

自分が聞いた着物のしきたりを是とし、他人のいでたちは間違いだと言う。異なった説、異なったしきたりを振りかざして相手を非難するようなの議論に私は加わりたくない。

着物のしきたりの本質を本論の中で考えて見ます。

③ 着物を日本の衣装として復権するには

着物は日本人が古来衣装として身に纏ってきたものであり、それは日常、非日常を問わず一年中、昼夜を問わず着ていたものです。それが現代では特殊な衣装となり、着る場も限られています。更にあらゆる規制が掛けられ、あたかも特権階級の人達の衣装のような面さえ感じられます。

着物を商うことを生業とする人たちは、一見着物の普及を叫んでいるようだけれども、実は着物を益々縁遠いものにしていることは否めません。

本当に着物を復権させるにはどうしたらよいのかを考えます。

以下、本論を毎週日曜日にUP致します。

ごあいさつ

1992年より二十数年に亘って結城屋のWEBページ「全日本きもの研究会」を続けて参りました。この間、WEBの発達はすばらしいもので、HPの数、質共に飛躍的に進化し、ブログ、ツイート、フェイスブックなど次々に新しいメニューが登場し、生活も商売もWEBなしでは成り立たないような世の中になっています。

そんな中にあって、「全日本きもの研究会」は技術的にも余り進化せずに主張したい内容を鈍重にUPしてきたように思えます。

そもそも「全日本きもの研究会」を立ち上げた動機というのは、私自身が身を置いている呉服業界に多大な疑問を感じていたからに他なりません。

全ての業界の裏を知っているわけではありませんが、「果たして呉服業界というのはこれでよいのだろうか」と言う素朴な疑問が「全日本もの研究会」立ち上げの動機となりました。商品としての呉服、着物が流通過程で設定される価格、またまた最終流通段階である小売において行われている所業と言うものが私にとっては受け入れられるものではなかったからです。

物を売る商売とは、時として換言すれば「金儲け」という非常に厳しい所業を強いられることもあることは承知しているつもりです。しかし、日本の伝統文化である呉服、着物を商うにあたっては決して超えては成らない一線があるように思えるのですが、私の定義するその一線をはるかに越えたことがなされているのが現在の呉服業界です。

そういう訳で、消費者に着物の良さを伝え、一線の範囲内で判断してもらえるものと努力して参りましたが、この20年でどれだけ消費者を啓蒙できたかは疑問です。

それは私の力不足、努力不足の一言でしかないのですが、私は夢を見ていたのかもしれません。「私の力で呉服業界を浄化できる。」のだと。

「全日本きもの研究会」に対する反応は多数寄せられました。それで私の意図が十分に伝わっているのだと過信していたかもしれません。

また、業界で小売する者として、内容もやや遠慮がちであったことも否めません。業界との軋轢を避けるためにオブラートに包んだような表現で訴えてきました。その結果、多くの読者に誤解を与えたかもしれません。

旅から旅さんのページをお借りして立ち上げている質問コーナーでは、過去400あまりのご質問に答えてきました。一つ一つ真摯にお答えしてきましたが、反応は様々でした。着物初心者の素朴な質問から、私ではお答えできないような学術的な質問までありましたが、中には着物の鑑定、また他社で購入しようとしている着物の相談まで、本来の趣旨とは異なった質問も寄せられるようになりました。

メールによる質問も多数頂戴しましたが、中には名無しのものや、質問事項だけ一行で寄せられるものなど、「全日本きもの研究会」は重宝な「よろず着物相談所」「着物無料鑑定所」とでも思われたのでしょうか。

それでも熱心に私の話に耳を傾けてくれた方も多くいらっしゃいました。わざわざ遠方より足を運んでいただいた方もいらっしゃいます。私が京都に上洛した折にお会いして話をさせていただいたこともありました。着物の事をもっと知りたい、本当の着物を知りたいと言う方も多くいらっしゃいますし、そのような方と接した時、「まだまだ日本の着物は後世に伝わるだろう」という気持ちになってきます。

いままでは大きな風呂敷を広げすぎたように思えます。今後、活動範囲を狭めてより深い活動を続けてゆきたいと思います。

とりあえず質問コーナー「ゆうきくんの質問箱」は終了させていただきます。長い間ありがとうございました。

質問コーナーは終わらせていただきますが、私は天岩戸に篭ってしまうわけではありません。お客様や真剣に着物に向き合っていらっしゃる方とは今後ともご相談に載り、また色々と教えていただきたいと思っております。

今まで「きもの春秋」のシリーズも奥歯に衣を着せたような表現で書いておりましたが、私が業界に対して、また消費者に対して申しあげたいことを、このコーナーで「きもの春秋終論」として歯に衣着せぬ表現で連載して参ります。

各方面からご批判を頂戴することになるかもしれませんが、皆様に訴えたいことを書いて行きたいと思います。

「きもの春秋終論」は毎週日曜日に更新の予定です。とりあえず最初は9月21日にUP致します。

お知らせと「今日の逸品」

お知らせ

「ゆうきくん」こと結城屋の結城康三です。

この度は、HPを一新することになりました。それに先駆けて一言皆様にお詫び申しあげなくてはなりません。

多くの方にアクセスいただき、また質問コーナーもご利用いただいておりましたが、諸事情により更新、返信が滞っておりました。

諸事情と言いますのは、私が市街地再開発に携わったこともありますが、それについては私の怠慢以外のなにものでもありません。申し訳ありません。

もう一つは、20年間きもの業界が正常に成るようにとHPを続けて参りましたが、此処にきて考えさせることも多々あり、続けることに疑問が生じてきた事です。

このことについては、このブログにて次回より語って参りたいと思います。

という訳で、HPを改変するに当たり、小さなHPへと移行いたします。

新しいブログのコーナーを設けて着物についての情報の発信を続けながら、商品も紹介します。従来の販売のページは終了させていただきます。(この辺の事情についても後日ブログにてお知らせいたします。)

「全日本きもの研究会」http://www.ykya.co.jp/の質問コーナーは、創設以来四百余のご質問を頂戴しお答えしてまいりましたが、終了させていただきます。

今後とも宜しくお願いいたします。

 

[今日の逸品]

染の北川 塩瀬染名古屋帯「紅葉」

大胆な柄と塗り絵のような染は、一見稚拙な柄ののように思えるかも知れません。染色作品は絵画と異なり、細密な絵柄はかえって柄をぼけさせてしまいます。

柄の細かい小紋やコントラストの弱い柄の小紋に合わせてみてください。誰の目にも秋の紅葉が手に取るように感じられることでしょう。

※商品に対するお問い合わせは、shop@kimono-yukiya.com